2026/08/25 19:44
私の人生が大きく動き始めたのは、35歳のときでした。
長年付き合っていた主人と一つ屋根の下で暮らし始め、事実婚ではあっても、夫婦として穏やかな生活を送れると思っていました。
けれど、実際に始まった暮らしは、思い描いていたものとは大きく違っていました。
その中心にあったのは、私が幼い頃から繰り返していた、小さな嘘でした。
自分らしくあるとは、どういうことだろう
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うっかりした失敗を隠す。忘れていたことを取り繕う。自分の能力不足を知られないように、もっともらしい事情を作る。
ひとつひとつは些細な嘘でした。けれど私にとっては、自信のない自分を守り、誰かに見放されずに生きるための、30年近く続いた習慣でした。
主人との口論が続く中、私は自分の気持ちを説明するほど、言い訳を重ねてしまいました。主人の言葉に反応し、身を守ることだけで精一杯になり、どこまでが本当の自分なのか、自分でもわからなくなっていきました。
自分らしくあるとは、どういうことだろう。
私は本当は、何を感じているのだろう。
誰かの期待へ応えるためでも、自分を守るために取り繕うのでもない「私」は、どこにいるのだろう。
夫婦関係の緊張は、私が長いあいだ見ないままにしてきた、自分自身との関係を浮かび上がらせました。
私はこの状況と、自分の中に積み重なった嘘の両方に向き合うと決めました。
十年以上眠っていたタロット
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ふと思い出したのは、広告代理店に勤めていた頃、取材のために買ったタロットカードでした。
十年以上、ほとんど触れずにいたカードです。
私はそれを取り出し、無我夢中で問いかけました。
「今の私は、どうすればいいのか」
「本当の私は、どんな人間なのか」
「私の感情は、この状況をどう感じているのか」
それまで私は、占いをどこか小馬鹿にしていました。
けれど、何度も展開したカードの象徴は、絡み合った感情と状況を、一つずつ言葉にして見せてくれました。
答えを外から与えられたというより、カードを前にすることで、自分の中にあった感情を、ようやく自分で見つめられるようになったのだと思います。
何度も現れた「女帝」
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主人との関係と自分自身について、さまざまな角度から問いかけるたび、繰り返し現れたカードがありました。
女帝の正位置です。
愛、豊かさ、創造、生み育てる力。自分の内側にある生命力を信頼し、自分自身の価値を受け取ること。
当時の私には、女帝がこう告げているように感じられました。
「あなたは、ここにいるよ」
感情も、思考も、愛情もある。
誰かの言葉によって、その事実まで失われることはない。
女帝が出るたびに、私は少しずつ自分の軸を取り戻しました。目の前の言葉や感情だけを世界のすべてにせず、自分は何を感じ、何を選び、どのような人間でありたいのかを考えるようになりました。
象徴は、自分自身と対話するための入口になる
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あの頃の私にとって、タロットは、言葉にできない自分の内側へ触れるための入口でした。
一枚の絵。色。人物の表情。そこに描かれた象徴。
象徴を見つめ、問いを立て、浮かんだ感覚を言葉にしていく。その積み重ねによって、恐怖に占領されていた意識へ、自分自身の声が戻ってきました。
私はこの経験をきっかけに占いを本格的に学び、やがてプロの占い師として活動するようになりました。
占いという芸術、心理、哲学、象徴の体系を通して、人間とより深く向き合いたいと思ったからです。
ひとつぶ屋へつながる、最初の原点
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現在のひとつぶ屋が大切にしている「自覚的に、意識的に、主体的に天然石と関わる」という考え方は、この体験にもつながっています。
タロットが、自分の内側にある声を映す鏡になったように、天然石もまた、願いを見つめ、意思を思い出し、自分との関係を結び直すための焦点になります。
石の色や形、重さ、冷たさ、そこに重ねられてきた神話や象徴。その一粒と関わる行為が、自分自身へ向き合うための小さな儀式になる。
ひとつぶ屋は、そんな一粒を、その方の具体的な願いに合わせて考える店でありたいと思っています。
次回は、鎧のようにまとっていた「偽物の自分」から、自分の原型を取り戻していった物語へ続きます。
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シリーズ案内
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この連載は、店主自身の劣等感と生きづらさが、占いや天然石との関わりを通して、ひとつぶ屋という店へ結びつくまでの記録です。
第1話:https://1pointstone.base.shop/blog/2026/08/25/145440
元の全4話:https://note.com/hitotsubu_ya/m/m34b3d464b1e6

